ソニーは19日の経営説明会で、2010年度から三次元(3D)テレビの関連事業を本格展開する方針を示した。3D対応の液晶テレビだけでなく、家庭用ゲーム機や業務用ビデオカメラなども投入することで、2012年度に1兆円を超える3D関連商品の売上高を目指す。
10年度内に、3Dテレビを発売するほか、ブルーレイディスクプレーヤーに加え、家庭用ゲーム機「プレイステーション3」を3D対応にする。こうした家庭用向けの3D関連商品のほか、放送・業務用機器の分野でも3Dカメラや編集機器を投入する。これによって12年度に、映画ソフトなどコンテンツを除いて1兆円を超える規模を目指すという。
さらに、ネットワークを通じてゲームや映画を提供するサービスも拡充する方針。これまでのネットサービスは、プレステ3などゲーム機を対応機器として「プレイステーションネットワーク(PSN)」を展開しているが、今後はゲーム機だけでなくテレビや携帯端末などへ対応機器を拡大する。
現在のネットワーク対応機器はプレステ3とプレイステーションポータブル(PSP)で累計販売が8300万台程度。これに対して、テレビ、携帯、パソコンなどもネットワーク対応機器にすることで、2012年度末までに3億5000万台まで拡大することを目指す。PSNの口座数は11月現在3300万人で、今期の売り上げ規模は500億円を見込んでいるが、今後は総合的な「ソニーオンラインサービス(仮称)」として発展させ、2012年度までに年間3000億円の売上げ規模にする構え。
また、ソニーはリチウムイオン電池事業も強化する。すでに展開しているパソコンやAV機器など民生用の分野だけでなく、バックアップ電源など蓄電池の分野のほか、電気自動車やハイブリッドカーなど次世代自動車用の分野にも参入を検討する。自動車メーカーへの提供については「顧客がいるので進ちょく状況は話せないが、量産することを考えている」(吉岡浩副社長)としている。
<テレビとゲームは来期黒字化へ>
赤字の続く液晶テレビ事業とゲーム事業は、来期に黒字化を目指すと表明した。09年度は、テレビ事業は6年連続、ゲーム事業は4年連続で営業赤字の見通し。液晶テレビ事業は、3Dテレビのほかバックライトに発光ダイオード(LED)を使用するLEDテレビなど高機能品を増やして販売拡大を図る。さらに、有機ELを含めた新型ディスプレイの開発も継続する方針。さらに、テレビ製造の外部委託の比率は数量ベースで今期は20%強だったが、来期は40%強に引き上げて、製造コストの削減を図る。
液晶テレビ事業は「リーディングポジションへの復権」(石田佳久SVP)を図るため、12年度には台数ベースの世界シェア20%を目指す。米調査会社ディスプレイサーチによると、08年の世界シェアは、出荷台数ベースで、韓国サムスン電子<005930.KS>が19.7%で首位、ソニーは13.7%で2位だった。今期はさらに苦戦しており、7―9月期の出荷シェアは、サムスン電子が18.4%、韓国LG電子<066570.KS>が10.7%となっており、ソニーは8.7%で3位に落ち込んでいる。
ゲーム事業については、製造コストが製品価格を上回る「逆ざや」が続いて苦しい状況だが、採算改善で来期の黒字化を目指す。9月に従来機より値下げした新型プレステ3の販売拡大も図る。平井一夫EVP(ソニー・コンピュータエンタテインメント社長)は、部品や設計の見直しによって「来年度には15%の(製造)コストダウンを目指す」と述べた。
<12年度までに営業利益率5%>
同日の経営説明会は、今年4月にハワード・ストリンガー会長が社長を兼務する新体制を発足したのを受けて開催した。ソニーは現在、製造拠点の統廃合や資材調達・物流の見直しでコスト削減を強化している。これらの施策によって、12年度までに営業利益率5%、株主資本利益率10%の達成を目指す。
ストリンガー会長兼社長は今後の経営方針について「ソニーの多くのハード商品とコンテンツの真の融合を推進する。コンテンツやサービスが、家庭機器やモバイル製品や他の機器に展開される」と述べた。
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