ユーロとは、哀しい通貨である。 ドルが売られる局面では、「未来の基軸通貨」「参加国が増え続ける通貨」としてもてはやされ、必要以上に買いが集まる。 しかし、投資家が不信の目を向ければ、その分強い売り圧力にさらされる。 「ユーロ」という傘の下に大小さまざまな事情を抱えた加盟国があって、問題の所在がどうしても見えにくい。ちょうど、葛饅頭のように。 ユーロはいま、統合通貨ゆえの宿命と向き合っている。 財政政策と金融政策の分立。 金融政策はECB(欧州中銀)が統括するが、財政は各国の当局が担当する。 しかし、ユーロにとどまるには財政赤字を名目GDP(国内総生産)の3%以内にとどめなくてはならない。 09年、財政再建に向けて走り出したユーロ加盟国。 この中で、脱落の危機に瀕している国がある。 ギリシャである。 ギリシャには、致命的な欠陥がある。 「統計が不正確」なのである。 09年10月の政権交代後に新しく生まれたパパンドレウ政権は、「歳出の計上漏れ」などを理由に08年の財政赤字を増額修正。09年の財政赤字見通しも名目GDP比3.7%から同12.5%(!!!)に下方修正した。ギリシャ政府は10年1月14日、12年に名目GDP比2.8%まで財政赤字を削減するとブチ上げたが、統計が不正確な以上、不信の火は消えない。ユーロ導入後に財政赤字が名目GDPの3%以下に収まったのは06年の1年しかないという衝撃の事実もある。 いっそ、ギリシャを離脱させればいいのか。 ギリシャとしては、どうしてもユーロを離れるわけにはいかない。 離脱してかつての通貨ドラクマを復活したらどうなるか。 信用は失墜し、通貨は暴落。対外債務が強烈に膨張する。 ユーロにあればこそ、信用力は担保され、EUの救済の可能性も残される。 15日、ユーロは対円、対ドルでサポートラインを割り込んだ。 ユーロが売り圧力に耐え忍ぶ日々が続く。◎関連情報は投資の参考として情報提供のみを目的としたものであり、為替取引に当たっては自己責任に基づき、ご自身で判断をお願いします。提供:モーニングスター社
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